徒然日記 Vol 572
「あたが生むわけじゃ~なかろうもん」
3月の一般質問で、熊本市職員の育児休業取得率が全国20の政令市中で最下位の状況から脱するための取り組みについて、質問する。そこで思い出したことがある。私の息子が生まれる40年前の話。当時、私は、知的障害児施設の県立肥後学園の指導員だった、明日には、子どもが生まれるとのことで、連れ合いの出産に立ち会うために、出産補助休暇を前日に申請した。ところが、園長に呼び出され「洋一ちゃん。あたが生むわけじゃなかろ~もん」と言われた。私は「出勤しても、無事に出産するまで心配で仕事にならないので、出産に立ち会いたいと思います。そのための休暇ですから」と伝えて、了解を得た◆出産の日は、朝から病院に行くも、夕方になりそうだということで、いったん帰宅して、午後から病院の待合室で待った。なかなか、生まれてこないので、筒井康隆のSFの短編集を読んで過ごした。動物の排せつ物を主食とする宇宙人が、地球人の排せつ物を食べるという内容の話を読んでいた。宇宙人が、それを皿に盛り、ナイフを入れての描写が、あまりにも生々しく気持ち悪いと思いながらも、本の中の世界に引き込まれていた◆その時、看護師さんが私の目の前に、生まれたばかりの赤ん坊を見せて「無事に生まれましたよ。元気な男の子です」と、言われた。突然、現実に引き戻されて、びっくりしたものの、連れ合いも元気と聞き、安堵した。そして、早速、園長に報告した。「良かった良かった」と喜んでいただいた。しかし、この話には、後日談がある。当時の出産補助休暇は、出産から10日以内に2日間の休暇となっていて、出産前には取得できないこととなっていた◆ということで、年休に振り替えた。あれから40年。現在の出産補助休暇は、出産の入院から40日以内に3日間の休暇が取れるようになっている。県も市も、多くの男性職員が、この休暇を取っているようだ。「あたが生むわけじゃなかろ~もん」の時代から、今では、育メンという言葉と共に、男性の育児参加は当たり前の時代となりつつある。あの日、私の目の前に差し出された赤ん坊は、今や、40歳のおっさんに、そして私は、もうすぐ70歳で、すっかり爺さんになってしまった。
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