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徒然日記 Vol 305

目を閉じれば・・

 この季節になると、いつも大学時代のことが思い起こされる。懐かしくもあり、ほろ苦い思い出だ。大学2年の21歳のちょうど今頃で、40年以上も前のことだ。3月の初めころから、土方のバイトをしていて、コツコツと働く私の姿が、現場の大将に気に入られて、静岡県の山奥の「日本教」という教団の敷地内の工事現場に行くことになった。その後、今度は千頭という小さな町での、ボーリング工事の助手として、4月の末まで小さな民宿に泊まり込み、日曜日と雨の日以外は、毎日山奥まで車で行き、歩いて現場に行き、働いた■ちょうどその頃は3年生に進むための教科の選択等の手続きをしなければならない時期だったが、失恋もして、大学に行くことの意味も見いだせず、ただただ、肉体労働の汗にまみれた日々を過ごしていた。今でも付き合っている同級生のFさんが、当時私のことを心配して、次学年に上がるための手続きを代行してくれた。おかげで、その後、単位がひとつだけ不足して、一年留年したものの、無事卒業ができて今に至る。あの頃は、失恋に伴って、人生について相当深く悩んでいた時期だった。今にして思えば、あの時に、悶々としつつも深く深く自分のことや将来などに対して考えたことで、青年期から大人になる大きな転換点だったのかもしれない■40年以上も経った今でも、目を閉じれば、あの頃の光景をいくつも思い浮かべることができる。千頭まで走る小さな汽車の窓から見た、緑色の大井川と深い森の景色。千頭の駅から民宿に向かう真っ暗な夜の雨の中、歩いていた道の足元に飛び出してきた、でっかい蛙に驚いた時のこと。仕事帰りに歩くトンネルの小さくて白くて遠い出口。山全体にこだまする、キッキッキというヒグラシの声。作業の途中に、急斜面の崖の木の枝につかまっての排便の後、斜面を転がる自分のうんちに、一人笑ったこと。作業に熱中している時、風に舞って目の前を通り過ぎる桜の花びらを目にして、やっと桜が満開であることに気付いた瞬間の驚き。その驚きは、遠くの桜並木の美しさと、季節の移ろいに気づかないほど、周りを見ていなかった自分への驚きだった■人は打ちのめされたり、何かに没頭したりすれば、周りが見えなくなる。その後も、私は40代の県職の組合の書記長時代の9年間に、また同じように、季節の移ろいや、花や景色の美しさに気づかない日々を過ごしたものだ。今は、これらの経験を糧にして、余裕を持って生きているつもりだ。しかし、あと何年生きるかわからないが、周りが見えなくなる時が、もう一度やってきたら、私はどうやって乗り越えるのだろうか?きっと、遠くに行き、また自分を見つめる旅に出るのだろうか?いつの日か悩むことなく、楽しい旅に出られることを夢見て、これから先、肩の力を抜いて生きていこうと思う。

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