徒然日記 Vol 285
とりつくしま
毎晩、酔っぱらってない限り、本を読んでから眠るようにしている。主に文庫本が多いが、毎月2~3冊で年間30冊ぐらいは読んでいるのだろうか?先日読み終わったのは東直子さんの「とりつくしま」。死んでしまい現世に未練がある人の所に、「とりつくしま係」が現れて、何かしらの物(動物や人間以外)に生まれ変われることができるという話。ただし、相手に話しかけたり、「私」だと知らせることはできない■息子を残して亡くなった母親は野球(投手)をする息子が気がかりで、ロージンになり、試合中の息子を見守る。幼くして亡くなった子どもは、好きだった青いジャングルジムになり母親と妹に再会する。夫の使うマグカップになった女性。カメラやリップクリームになった人もいる。本の帯には「やさしさに包まれながら号泣していました」と書いてあったが、涙は一滴も出なかった■その代わりに、何かしらにとりついた死者たちの言葉や、物になって見つめる世界には、しっとりとした輝きと優しさがあり、読後感はすがすがしかった。そして、自分が生まれ変われるのならば、いったい何に生まれ変わるのだろうと思った。きっと、母親や連れ合いも気がかりだが、孫たちに関わる何かしらに「とりつく」と思う。「例えば」と考えて、はたと困った。何も思い浮かばない。であれば、生きているうちに孫たちに、大事に一生身に着けるか、使い続けられる物を贈るしかない■鏡・時計・万年筆などと思案するが、いったい何がいいのだろうか?色々と品物を考えながら、行きついて思いついた。大切なのは、私が生きている間に、孫たちにどんな思い出を残せるのか、ということが大事だということに。あの世に行き、例え「とりつくしま係」が来ても、「私は現世に未練はありません。とりつくしまは無い」と言えるように生きなければ。心の中に思い出として、「私」がいればそれでいい。そう思った。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 徒然日記 Vol 715(2024.04.09)
- 徒然日記 Vol 714(2024.04.07)
- 徒然日記 Vol 713(2024.03.27)
- 徒然日記 Vol 712(2024.03.20)
- 徒然日記 Vol 711(2024.03.13)
コメント