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2010年3月

学童の日々 Vol 35

Hさんごめんなさい」

 学童では、毎日順番で子どもたち三人と一緒に男子と女子と職員のトイレの掃除をしている。ある日のこと三つのトイレに分かれて掃除をしていた時に、女子トイレからとても大きな怒った声で「福永先生!洗剤がかかっとらんたい」と二年生のHさん。オヤツのときから眠たそうにしていたHさんは、不機嫌な顔で私を睨みつける■私は「ごめんごめん」と言って、便器に洗剤をかけて、また他の子たちの別なトイレに。思わず「あ~怒られた~。狼みたいに吠えられて怖かった~」と言ったら、掃除をしていた二人の子が笑った。その後、すぐに「ワ~」とHさんの大きな泣き声が・・・。私はあわてて「ごめん。ごめん。Hさんがあんまり怖くて狼って言ってしまった。もう言いません許してください」と頭を下げた。でも許してくれない。泣きやまない■ほったらかしにしておけば、泣きやんで掃除をしてくれるかな?と思ったものの、静かになったので見に行くと、Hさんはトイレの入口に座り込んでいた。私は黙って遣り残しの便器を磨き、床を拭いた。雑巾を絞り外に干す頃には、Hさんは外で遊んでいた■夕方、ランドセルを背負って帰るHさんに「今日はごめんね。許してください。許してくれないと今夜眠れないんですけど」と言ったが、睨みつけて何も応えてくれない。私は、走り去ろうとしたHさんのランドセルをつかみ「待ってよ」と言うと、Hさんは振り向きざまに「私のランドセルに触らないで!」と言って帰ってしまった。きちんと許してくれなかったので、その夜はなんとなく寝つきが悪かった。翌日、「ごめんなさい」も言う間も無く、Hさんは私に会うなり「狼って言ったひと~」と私を指差して笑いながら逃げて行った。

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学童の日々 Vol 34

「しかぶったと?」

 ある日トイレですれ違った一年生のS君のズボンが濡れているのに気付いた。「S君ズボンが濡れてるよ。もしかしてしかぶったと?」と聞くと、「うん」と答えた。見ると下着まで濡らしていた。すぐに着替えさせて、どうして濡らしたのか聞いたところ「おチンチンがくっついててオシッコがひっかかった」と答えた■その場はそれで終わったのだが、何かが引っかかり、夕方にふと思いついてS君に「オシッコするときはどうやってすると?」と聞いた。するとS君は両手を足の付け根に添えて「こうやって」と答えた。これまでチンチンを持たずにオシッコをしていたのだ。「いつもチンチン持たずにオシッコしよっと?」と聞くと、「うん」と答えた■「オシッコはチンチンを持ってせんといかんとバイ。そうせんとどこそこにオシッコがひっかかるたい」と言うと、S君は「うそ~。知らんかった~」と驚いた様子。すぐにトイレに行き、実際にオシッコをして見せた。S君はそれを見ながら「へ~。ぼくもしてみよう」と言って、おチンチンに手を添えて勢いよくオシッコをした■翌日、学校から帰ってきたS君、私に会うなり小さな声で「ちゃんとチンチン持ってしよるけん」と話す。私は「そうね、これで下着もズボンも濡れんバイ。良かったね」と答えた。後日、心配になって一年生から三年生までの男子の全員にオシッコの仕方を聞いたところ、もう一人だけおチンチンを持たずにオシッコをする子がいた。誰も教えてくれなかったのだろうか?わざわざ手を添えなくてもオシッコが真っ直ぐ飛ぶのだろうか?いずれにしても驚きだ。

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学童の日々 Vol 33

「お帰りなさいませ」

学童は、子どもたちにとっては、学校から最初に帰ってくる場所だから家みたいなものだ。「ただいま~」と大きな声で帰って来る子もいれば、何も言わずに帰って来る子もいる。近頃では、帰ってきた時のそれぞれの子の顔を見れば、今日は「元気」とか「何かあったみたいだ」とかが分かるようになってきた■ある日、そんな子たちを玄関で、「お帰りなさいませ。○○お坊ちゃま。お嬢さま」と言って出迎えてみた。ある子はキョトンとしながらも小さな声で「ただいま」と言ってくれた。ある子は無視。ある子は「なんば言いよると?アホ!お前は召使いか!」とか突っ込んでくれた。一番面白く対応してくれたのは二年生のK君だった■「お帰りなさいませKお坊ちゃま」と私が言うと、ニッコリ笑って、すかさず「やあ~ご苦労。このバッグを片づけときなさい」と言って習い事の水泳のバッグを私に渡した■学童の子ども達が家庭や学校で嫌なことがあっても学童に来れば明るく元気になり、そして、「ただいま~」と大きな声で帰って来れたらいいなと思う。

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学童の日々 Vol 32

「すくすくつぶれろ」

ある日の午後、一年生の男の子が「トイレに『すくすくつぶれろ』って書いてある」と伝えに来た。すくすくは私の所属する学童保育の「すくすくクラブ」のことだ。男子トイレに行くと、壁に鉛筆で「すくすくつぶれろ」と書いてあった。昨年の春にも、同じ文字で同じ内容が書いてあった。その時は、二年生のS君が「落書きが書いてある」と知らせに来た。職員間では、その頃しきりに「学童をやめたい」と言っていたS君本人の仕業かな?とは思ったが、確信が持てずにそのままで終わった■翌日、私は本を読んでいるS君の横で、「あ~どうしよう。トイレにまた、『すくすくつぶれろ』って書いた子がいるんだけど、落書きは消えないし、他の先生には言いたくないし、おまわりさんは呼びたくないし、こまったな~」と言った。S君は、今にも泣きそうな顔で、「トイレに行ってきます」と言ってトイレに走った。私は、しばらく時間を置いた後、トイレにS君を呼び出して落書きを見せて、その落書きに洗剤をかけながら、「S君がしたんならば消してください」と伝えた。S君は私が持っていたティッシュで落書きを消し始めた。「S君がしたと?」と聞くと「覚えていない」と答えた。私は「S君が書いたんじゃないなら消さんでもいいとバイ」と言った。S君は「僕が書いた」とポツリと言った■私は、落書きを消しているS君に、「いくらすくすくに来たくないからといって、トイレに落書きをするのはダメです。『すくすくつぶれろ』って書いてもすくすくは無くならないよ。もうしないでください」と言った。いつも、集団の輪に入れずに部屋では一人でポツンと本を読んでいるか、ビデオを見ているS君。外遊びでも一人でいることがほとんど。昨年の春に、友だちだったK君がすくすくをやめてからというもの、心の中は「すくすくやめたい」でいっぱいだったのだ。その思いは落書きが消えてもずっと変わらなかったのだ■学童は三年生までは利用できるのだが、今度三年生になるS君は、一年生になる妹と入れ替わりで4月にはすくすくをやめるそうだ。数日後、S君と話をした。「すくすくをすぐにでもやめたいから『つぶれろ』って書いたんだろう?」と聞くと、「うん」と答えた。「なぜそんなにやめたいと?友だちがおらんけん?」と聞くと、「友だちがおらん」と答えた。「友だちは誰ね」と聞くとK君の名前が・・・。そして、「これからは、いやな事があっても落書きなんかしないで、きちんと言葉で相手に気持ちを伝えようね。残り一ヶ月がんばるバイ」と話して指切りして終わった。最後まですくすくの中で、自分の居場所を見つけられなかったS君。これからは、もっとたくさんの友だちをつくり、自分の居場所を見つけて明るく元気に過ごしてほしいものだ。

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