北の空から/心癒されて Vol 13
すばらしき博物館/53万円あったなら
熊本への帰り道の最後の探訪に、岡山県美作市の現代玩具博物館に行って来た。清流の流れる小さな町を抜けた山の中腹に、欧風のオシャレな建物が紫のアジサイの花に囲まれて建っていた■東京の友人が紹介してくれた家具職人の方が「玩具が好きならぜひ行ったらいい」と教えてくれた場所だ。3時間いたが時間が足りなかった。世界の玩具とオルゴールが展示されていた。色とりどりの近代的な玩具の中に混ざって、デッキブラシなどの廃材で作られた「めええ~」と音の出るヤギは素朴で飾りっけが無く、ひときわ存在感があった。オルゴールは30分間ほど色々な機種の音を目の前で聞かせてくれる■特に気に入ったのが、ゼンマイを巻いてスイッチを入れると、手の平に乗るほどの小さな箱から小指の先ほどの小鳥が出てきて、綺麗なさえずりに合わせて体を震わせ、羽を、尻尾を、そして嘴をも動かすのだ。時価53万円とのこと。一桁安ければ買えるのだが・・・■今でも、あの小鳥の姿とさえずりが忘れられない。いつの日か宝くじでも当たったら買おうかなと思っている。叶わぬ夢だけれども。
51日間10000キロの旅を終えて、もうすぐ一年になろうとしている。あっという間の51日間だった。もしも、宗谷岬のその先に北行きの道路があったらば、私は未だ旅を続けていたかもしれない■今回の旅は、54年間生きてきた中で、一人旅の最長記録だった。ただひたすら北をめざして走り続けた。話し相手は誰もいなかったが淋しくはなかった。毎日の食事と眠る場所の確保を考え、好きな場所を探索しながら移動する日々。毎日が充実していた。そして私の心は癒された。目を閉じれば、今でも、懐かしい友人たちの笑顔や、綺麗な夕焼けや丘に咲く花々が見える。岩を砕く波の音や森を渡る鳥たちのさえずりが聞こえてくる。山に吹く風や海辺の潮の香りがする■しかし、帰り道はつらかった。夏真っ盛りの九州に近づくほどに現実に少しずつ引き戻される身体。夜中に汗にまみれて目が覚めるたびに、引き返したくなった。神戸を過ぎる頃に関東地方の梅雨が明けた。晴れ渡った青空にたったひとつの雲が飛んでいた。私の車の中にはすっかり枯れてしまった北の大地の野の花が揺れていた。そして私の胸の中には、これから始めようとする事柄のたくさんの夢が詰まっていた■あれから一年。夢が少しずつ芽を出してきた。いつの日か夢が叶い、花が咲く頃に、また旅に出よう。花を摘んでまた新しい夢を紡ぐために・・・。
今回で「北の空から/心癒されて」の旅のブログは終了します。ご愛読ありがとうございました。
次回からは、道中に作った俳句の特集です。
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