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2007年12月

北の空から/心癒されて Vol 7

200706270609001 男女混浴無料の湯「吹上温泉」

  さすがに丸二日間風呂に入らないでいると気持ちが悪い。日暮れ前に美瑛の町でガソリンを入れる時にスタンドの女性に「近くに安くて綺麗な温泉はない?」と聞くと、「白金温泉を10キロ程行った所に吹上という男女混浴の無料の温泉がありますよ」の返事。思わず鼻の下を長くして場所を聞く■温泉の入り口の広場に着くと、そこにはキャンピングカーやワゴン車が5台ほど駐車しており、広場の一角には4人の年配の男女がキャンプ用の椅子に座り車座になって話をしていた。温泉はその広場から山道を歩いて5分ほどの所にあった■山の崖っぷちの岩を穿って作った湯船が上下にふたつ。100度の源泉かけ流しの、まさしく天然温泉だ。たった一人で暮れていく峡谷の景色を見ながらの無料の温泉。なんと贅沢なひとときよ。その日は汗を流して近くの道の駅に帰るつもりだったが、心地よき温泉に魅せられてしまい、広場に車を停めてもう一泊して、翌早朝も極楽の湯に浸り吹上を後にした■後日談だが、この温泉は有名で、週末になると広場は車で埋め尽くされて、温泉は芋の子を洗うがごとき、とのこと。しかし、乗用車に貴重品を置いたまま温泉に行ったりすれば、窓ガラスを割られることもあるとか。もし行かれるのであれば、貴重品は車に置かずに持参して温泉に入るべし。

吹上の夜は更けて

   吹上温泉が気に入って、その日の夜は広場に車を停めて野宿することにした。小雨が降る中、シートの下でウイスキーを片手に旅の計画を立てていた。すると、夕方に温泉の場所を教えてくれたおっさんが缶ビールを片手にやって来て、「おっ。飲兵衛がいたっ」と嬉しそうに隣の石の上に座った■その人は、北見市在住のMさん60代で、週何日かの夜勤の仕事の合間に、この広場にやって来て色々な人たちと会うのを楽しみにしているという。Mさんは中国が好きで昨年は、「2週間かけて中国の川下りのツアーに行ってきた。中国は広大な景色がいい」と言う。酔いが回ってきた頃、Mさんは携帯の画面を見せた。そこには綺麗な女性の姿が・・・。感想を聞かれたので、「頭が良くて、優しそうで、綺麗ですね」と答えた■Mさんは、その後の2時間ほどズーッとその女性の話をした。その女性は30代の在日の中国人で7年間付き合っていること、妻と別れて一緒になろうかと思っていることなどを・・・・。私は「奥さんと別れることは良くない。騙されてはいないだろうけれど、一緒になっても幸せにはなれない」などと諭した■23時頃、2歳ぐらいの子どもを抱いた夫婦が、「すみません温泉は何処ですか?ライトを貸していただけませんか?」とやって来た。Mさんと「こんな夜中に、ライトも持たず、子連れで温泉なんて非常識だ」と話していると、今度はもう一人おっさんがやって来た。大阪の人で、「いつもは、ホテルや民宿に泊まっているが、今夜は広場に車を停めて野宿をしている。眠れないので一緒に飲みたい」ということで、雨の中、三人で飲むことになった。私は、己のことは忘れて『世の中には変わった人がたくさんいるもんだ』と思いながら、ウイスキーの入ったカップに水を注いだ。

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北の空から/心癒されて Vol 6

カモメになりたい

 

 知床五湖のうちの二湖を見ての帰り道に、面白い光景を見た。世界遺産の知床をほんの一日で満喫できるはずもなく、何かしら物足りなさを感じながらの帰り道。走る車の右側に断崖が見える。きっと何か見えるだろうと車を停めてみた。断崖の下には川が流れている。波が打ち寄せる遠くの岩の上や断崖の隙間には、真っ黒い海鵜が何羽も毛づくろいをしていた■川の近くには、たくさんのカモメが飛び交っていた。知床の川は高い山から一気に海に流れ出るために流れがとても急だ。双眼鏡で覗くと、カモメたちは海に流れ込む川の手前100メートルほどに飛んで川面に浮かぶ。その間、羽を広げて身づくろいをしながら、クルクルと川の流れに身を任せて河口まで流れていく■波が打ち寄せる瞬間に飛び立ち、また川の上流に着水して川面を流れていく。同じカモメがおおよそ3回から4回ほど流れた後で川岸に下りて休憩していた。川面に浮かびユラユラと流れていくカモメたち。双眼鏡を抱えて笑ってしまった。みんなクルクルと回りながら流されて行き、波が打ち寄せる前に飛び立つ、その繰り返し■まさしく遊んでいるのだ。そう思うとカモメたちが笑っているような顔に見えてくる。一瞬「カモメになりたい」と思ってしまった。

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 ← 紋別郡のある町のある牧場の牛たち

     

  この、のどかな景色を写真に収めた後に、下記の事件に・・・

おまちがい/畑で叱られて死にかぶる

 その日の昼は、紋別郡のある町の牧場の景色に魅せられて、緑の小高い牧草地で草を食む牛たちをカメラにおさめるのに夢中になっていた。昼食の時間もとうに過ぎてしまい時計は14時。あまりの空腹に、通りすがりの畑の入口の一角に車を停めて、前日に釣り上げたオショロコマの燻製を作りながら、飯ごうでご飯を炊いていた■しばし目を放した隙に燻製用のダンボールの箱に火がついてしまい、あわててひっくり返して足で火を消して事なきを得た。と、その時、でっかいトラクターに乗ったおっさんが「何しよるかあ~人の畑で~」と血相を変えて叫ぶ。私は直立不動で「すっすいません。昼飯を作ってました」と言って、頭を下げた■おっさんは「なっに~頭にきた~」と言って、トラクターのエンジンを吹かす。私は「すいませんすいません」と言いながら、バーナーのガスを止めて、まだ炊き上がっていない飯ごうとガスバーナーを車に放り込み、その場所を離れた■近くの道の駅で、真っ黒に焦げてしまったオショロコマをおかずにゴッチン飯を口に方張りながら『二度と人の土地には足を踏み入れないこと』を誓った。

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北の空から/心癒されて Vol 5

Photo

 何してるん!?

 

 北海道は、自然の宝庫だ。特に知床は、世界自然遺産だけに、その風景や動物たちの姿には感激させられた。知床の海岸沿いを走る一時間ほどの間に崖の上や森の中に10頭近くの鹿を見ることができた。鹿に出くわすたびにカメラを持って近づくが遠すぎて絵にならなかったり、逃げてしまい撮ることができなかった■その日はウトロの海岸沿いに車を停めて野宿。夜は海岸に出てウイスキーを片手に、釣竿を立てて、ホッケを二匹釣り上げた。そして、遠くの波の音を子守唄にして眠りについた。翌朝4時過ぎにトイレ行きのために車のドアを開けて外に出ると、ほんの2メートルほどの目の前で、鹿が二頭、草を食べていた■鹿と目が会った。お互いに驚くというより「何してるん!?こんな時間こんな所で」という顔。私が用を足しているその間に鹿はゆっくりと土手を登り道路を横切って山に帰って行った。この時こそが鹿を間近に撮影する最初で最後のシャッターチャンスだった■しかし、優しい鹿の目をしっかりと覚えているからいいのだ。

                       

                

Photo_2

 まぼろしのオショロコマ         

 北海道の道の駅で知り合った東京から来ていた83歳の旅の達人に教えてもらった場所、ヌプントムラウシ。そこは山登りをする人以外知っている人が少ない秘境だった。前日はヌプントムラウシの西側のトムラウシ山の麓にある国民宿舎近くの駐車場に野宿。翌早朝に二時間かけてヌプントムラウシまで行った■温泉に入り、昼食を済ませての帰り道に釣りをした。午後のたった40分の間に川岸を5~60メートル歩いてミミズを餌に20数匹のオショロコマ(北海道だけに生息する岩魚)を釣り上げた。ポイントにスッと餌を投げ入れるとガツンと当たる、まさしく入れ食いだった■第一投に来たのは25~6センチのオショロコマ。えらに枝を通して確保。第2投は20センチ程度でさらに確保。その後は、15センチ前後ばかりですべてリリース。しかし、不思議なことが・・・。足元に置いていたはずの二匹が消えてしまったのだ■しばらく、歩いてきた川岸を探すが見つからない。カラスかトンビにさらわれたか?キタキツネ?まさかヒグマ?聞こえるのは川を流れる水の音だけ。一瞬、背中が寒くなる。その後、気を取り直して釣りを再開。15センチ前後のオショロコマを4匹だけ持ち帰った。しかし、あのオショロコマは何処へ?

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