北の空から/心癒されて Vol 4
その日は、快晴で気持ちのいい風が吹いていた。私の車は、紋別の海岸沿いを走っていた。綺麗な砂浜に車を停めると、流木が岸にたくさん流れ着いている。私は取り付かれたように流木を拾った■いつだったか、新宿の東急ハンズに行った時に流木が売ってあった。いずれも立派な枝振りだった。値段は1,000円から3,000円程度。いくら拾う手間賃・運賃・場所代とはいえタダ同然の流木が、「高すぎるのでは?」と思ったものだ■気が付くと私は海岸を二時間近く歩き回り約100本ほどの流木を拾っていた。しめて20万円程の流木か。それぞれの流木は個性があり、魚に見えたり、竜やエイリアンの姿や人の顔をした物もある。どこかの山から川の流れに乗って海に流れ出て、長い年月をかけて波に洗われて紋別の海岸に打ち寄せられて・・・。そして、私に拾われて■熊本に 帰ってから、いくつかの流木でオブジェを作った。ただの飾りでは面白くないので、台に切込みを入れてキーホルダーを掛けられるようにした。北海道の流木は熊本の材木と一緒になり飾られることになった。「流木のごとき人生かな」と誰かが言っていたそうな。拾われた流木の人生はきっと幸福!?
ナビ子よ
51日間1万キロの一人旅の間に多くの人に出会った。しかし、一日中ほとんど誰とも話をすることも無く過ごすことの方が多かった。買い物に入ったコンビニやスーパーのレジで「どうも」と、一言しか会話しなかった日が幾日も続いた。でも寂しくはない。移動時間は、ラジオやCDやカセットの音楽を聴いて、時々大声で歌ったりもした。即興の詩を読んだり、知っている落語のくだりを語ったりもした■それにも飽きたらナビ子がいる。ボタンを押すと、涼しい声でナビ子は言う「しばらく道なりに行くルートです」。「本当に?」と聞き返してまたボタンを押す。また同じように「しばらく道なりに行くルートです」。三回目になるとさすがに黙り込んでしまう。時々、ナビ子の指示するルートを外れると、「案内ルートを外れました。リルートします」と言って、しばらくの沈黙の後に「700メートル先を右折してください」「300メートル先を右折してください」「この先を右折してください」と、しつこく親切に道を教えてくれる■その涼しい声に何度助けられ、そして励まされたことか。しかし、ナビ子は10年前に作られたカーナビだ。ナビ子は新しい道路を知らないのだ。信じすぎると騙される■何回遠回りをさせられたことか。その度に「嘘つき」と言ってなじるのだが、なにせ相手は機械。自分で地図を開いて近道を見つけて走るしかない。そんな時ナビ子は言う「案内ルートを外れました。リルートします」。
← ナビ子の指示で走る。
そして行止り・・・。
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