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2007年11月

北の空から/心癒されて Vol 4

M7b11013_3 遠き山忘れられずに流木は・・・

その日は、快晴で気持ちのいい風が吹いていた。私の車は、紋別の海岸沿いを走っていた。綺麗な砂浜に車を停めると、流木が岸にたくさん流れ着いている。私は取り付かれたように流木を拾った■いつだったか、新宿の東急ハンズに行った時に流木が売ってあった。いずれも立派な枝振りだった。値段は1,000円から3,000円程度。いくら拾う手間賃・運賃・場所代とはいえタダ同然の流木が、「高すぎるのでは?」と思ったものだ■気が付くと私は海岸を二時間近く歩き回り約100本ほどの流木を拾っていた。しめて20万円程の流木か。それぞれの流木は個性があり、魚に見えたり、竜やエイリアンの姿や人の顔をした物もある。どこかの山から川の流れに乗って海に流れ出て、長い年月をかけて波に洗われて紋別の海岸に打ち寄せられて・・・。そして、私に拾われて■熊本に 帰ってから、いくつかの流木でオブジェを作った。ただの飾りでは面白くないので、台に切込みを入れてキーホルダーを掛けられるようにした。北海道の流木は熊本の材木と一緒になり飾られることになった。「流木のごとき人生かな」と誰かが言っていたそうな。拾われた流木の人生はきっと幸福!?

ナビ子よ

51日間1万キロの一人旅の間に多くの人に出会った。しかし、一日中ほとんど誰とも話をすることも無く過ごすことの方が多かった。買い物に入ったコンビニやスーパーのレジで「どうも」と、一言しか会話しなかった日が幾日も続いた。でも寂しくはない。移動時間は、ラジオやCDやカセットの音楽を聴いて、時々大声で歌ったりもした。即興の詩を読んだり、知っている落語のくだりを語ったりもした■それにも飽きたらナビ子がいる。ボタンを押すと、涼しい声でナビ子は言う「しばらく道なりに行くルートです」。「本当に?」と聞き返してまたボタンを押す。また同じように「しばらく道なりに行くルートです」。三回目になるとさすがに黙り込んでしまう。時々、ナビ子の指示するルートを外れると、「案内ルートを外れました。リルートします」と言って、しばらくの沈黙の後に「700メートル先を右折してください」「300メートル先を右折してください」「この先を右折してください」と、しつこく親切に道を教えてくれる■その涼しい声に何度助けられ、そして励まされたことか。しかし、ナビ子は10年前に作られたカーナビだ。ナビ子は新しい道路を知らないのだ。信じすぎると騙される■何回遠回りをさせられたことか。その度に「嘘つき」と言ってなじるのだが、なにせ相手は機械。自分で地図を開いて近道を見つけて走るしかない。そんな時ナビ子は言う「案内ルートを外れました。リルートします」。

Fh020021

← ナビ子の指示で走る。

 そして行止り・・・。

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北の空から/心癒されて Vol 3

Photo_7

    懐かしき写真の町ひがしかわ

 旭川から15分ほど南へ走ると東川という町がある。今回の北海道の旅で一番印象深い場所だ。好きだった木工の作品と素敵な人たちに出会えたからだ。今回の旅の目的のひとつに、数年前に熊本の伝統工芸館の北海道木工作品展で観た、素敵な作品(木の端くれの穴に小鳥が入っていて、小鳥の顔が見える)とその作者を探し、「作品にもう一度出会い、作者に会うこと」があった■前日は、旭川で木工関連の施設や店に立ち寄り、作品を探すが見つからない。最後に立ち寄ったブラウンボックスという店の女性に聞くと「東川町のお店に作品はあるけれど作者は数年前に亡くなった」とのこと。やっと作品に出会えることになったが作者は既に亡くなっているということで、嬉しくて悲しい複雑な気持ちで東川町に行くことになった。翌日、町の「コタン・クル・カムイ」というお店の二階で、熊本で出会った作品に再会し、初めて知る作者(太田久幸さん)の記録を見ることができた。感無量だった■その日は、町を散策し文化ギャラリーでの石黒健治氏の写真展を見て日が暮れた。ちなみに東川町は、写真の町として有名なところだ。道の駅はその日はなぜか車が多くて、我が車は端っこに置くことしかできず、いつもの料理をするスペースも無く、車内でほか弁を食べた。寂しい夕食が終わる頃、木彫りの素敵な看板が目に入る。「りしり」と書いてあり、その看板が「おいでおいで」と手招きをしている■夜の8時を回っていたが暖簾をくぐり空いていたカウンターの真ん中に座った。30代の若旦那とそのお母さんの女将さんがカウンターに居て、新鮮なネタが目の前に並び、座敷からは楽しそうな声が・・・。期待通りのおいしい肴と酒。そしてカウンターに同席した素晴らしき人たちとのめくるめく三時間。この続きは、「居酒屋りしりの夜は更けて」で。

Photo_8 居酒屋「りしり」の夜は更けて

 旬のおいしい肴で酒を飲みながら「りしり」のカウンター越しに若旦那に、「この町は綺麗だね。特にお店の看板が素敵だ」と話すと、隣に座っていた男性が「あれは、30年前に俺が発案したんだ」の声。なんと、りしりの近くの薬局のご主人で町議会議長さんとのこと。その方は町の看板を自慢しながらも「看板は服装で言えばネクタイのようなもの、しかし、ネクタイしてジーパンだったり、サンダルだったりの店がいくつかあって、看板倒れだ」と嘆いておられた■議長さんが帰る頃、今度は、役場のMさんという人が来られた。私が「明日の朝には違う町に行く」と言うと、「木工が好きならば、この町にも優れた匠がたくさん居るよ。いくつか選んであげるから、行くといい」と三箇所だけ選んでもらった。このMさんはもともと国の役人で全国各地を転勤してきたが、3年前から大雪山の仕事に携わってからというもの、東川町が好きで好きでたまらなくなり、今年度からとうとう町の職員になったとか。Mさんは、「東川町は『水が美味い』『人がいい』『食べ物が美味い』『景色がいい』から、あなたもこの町に住んでみては」と言う■確かに次々に出てくる刺身や野菜の新鮮で美味いこと美味いこと。ほろ酔い加減の頃に、今度は三人目の和田さんが隣に座った。和田さんは、「50半ばだが今年仕事を辞めて、大阪を出てこの町に家を建てている。妻は家が建ってから呼ぶことにしている。先週やっと仕事も決まった。残りの人生をこの町で過ごす」とのこと。数年前の旅行で、その町並みを見て一度で好きになり、三回目の旅で大阪を出ることを決心したそうだ。和田さん曰く「最後の決め手はこれでした」と、若旦那が持ってきた野菜スティック盛り合わせの中からニンジンとアスパラガスを私の皿に。何もつけずに食べるように言われて食べた。どちらも甘くて美味いのだ■若旦那が囁く「福永さんが今夜出会った三人のお客さんが同じ夜に一遍に来られるのは初めてのことなんですよ。何か因縁みたいですよね。東川町に住みましょうか?」と。二回目の北海道の旅では行き先リストから東川町は外すことにしよう。二度と帰って来られなくなるから‥・・・。

■東川町情報

東川町は旭川の東南13キロ(車で15分程度)。町の概要等は役場のホームページを参照のこと。自宅にいながらにして北海道東川町の四季折々の美しい景色を見ることができる。

□居酒屋・りしり  TEL0166-82-4088 〒071-1423 北海道上川郡東川町東町1

□道の駅・道草館  TEL0166-68-4777   〃       〃

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